国会初質問に立つ

 本日、衆議院環境委員会で念願の初質問の機会を得ました。
 議会質問は奈良県議会での質問以来実に5年ぶりで与党議員としては初めての質問に少々とまどいましたが、このような議会活動ができるチャンスをお与えいただいた支持者の皆さんにあらためて感謝させていただきますとともにさらにその責任を果たすために全力を尽くさせていただく決意です。
 今回大気汚染防止法水質汚濁防止法の改正が政府提案されており、これについての質問と提案を行わせていただきました。近年工場等からのばい煙や排水の排出基準が超過しているにもかかわらず、その測定データを改ざんして自治体に報告するなどの法令違反事例が続発する中、今回の改正で罰則の強化を図るという内容の法案です。
私は、再発防止のためには単に罰則の強化だけでなく、企業の現場と、監視任務を担う自治体の現場の体制が弱体化していることこそが今回の事例の背景にあるとの認識からの対策を訴えました。(質問要旨は下記の通り)

大気汚染防止法水質汚濁防止法改正 質問要旨(3月30日衆議院環境委員会質疑)
はじめに
小沢大臣、田島副大臣、大谷政務官 COP15、地球温暖化対策基本法案のとりまとめ、生物多様性条約第10回締約国会議の日本開催に向けた取り組みに感謝

本法案に賛成の立場ではあるが、今回改正の発端となった法令違反事例の根絶には今後のさらなる改善が必要との認識を持っている。そういう意味からもいくつかの問題点を指摘しながら提案も行いたい。限られた時間なので簡潔なる答弁を願う。
今回の大気汚染防止法水質汚濁防止法の改正の背景には、、排出基準を超過しているにもかかわらず、その測定データを改ざんするなどの法令違反事件が最近次々と発覚したことがあげられています。しかも、データ改ざんといってもその実態は、何も手の込んだものではなく、ごく単純な手口であることが多いわけであります。立ち入り検査時の排水に川の水を混ぜて、薄めたり、排出煤煙の測定の針を一定時間手で押さえて上にふれないようにするといったもので、しかもこれらが起こった事業所の多くは、日本を代表する一流企業で、長期にわたってデータ改ざんを行ってきた事実から、この問題の根の深さをかいま見るわけであり、きわめて残念ながら、発覚したケースは氷山の一角でゃないかと思うわけでありますが、いかがでしょうか?
 大気汚染防止法および水質汚濁防止法これら2つの法律の立法目的はそれぞれ、「事業活動に伴うばい煙の排出の規制等による国民の健康保護と生活環境の保全」「公共用水域への水の排出等による国民の健康保護と生活環境の保全」でありますが、この立法目的を達成し、法令遵守の実効性を確保するためには、事業活動を行う企業側と監視業務を行う自治体側の両方からその対策を考えるべきである。
 企業側の問題(煤煙の排出や排水を行う)
 今回新たに排出状況の把握や排出削減への取り組みについて、事業者の責務規定が盛り込まれているが、過去に発生した違反事例においては、基準を超えても操業を止める権限が社内の環境管理担当者に与えられていないことや、直接の利益を生む訳ではない環境管理部門がコスト圧縮のために人員削減の対象として目をつけられることが多いことなどがデータ改ざんの背景の一つにあげられている。実際ある企業のデータ改ざん事例の当事者は、「排出超過があっても操業停止はできないが、法令違反もしたくなかったので、やむなくデータ改ざんを行ってしまった。」と述べています。この点について、公害防止統括者と公害防止管理者の確保と、業務と権限の明確化と身分保障をすべきであると考えますし、これが現場での未然防止という観点からもきわめて重要であろうと思うところです。この点、今年の1月に出された「今後の効果的な公害防止の取り組み促進方策のあり方について」の中央環境審議会の答申では、「公害防止管理者から経営者等に提案できる仕組み、公害防止管理者がその適正な業務の遂行に当たって、不利益な取り扱いを受けないような方策等を検討することが有用である。」と提言している。これを踏まえ、事業者による公害防止管理体制整備の促進を図るため早急にこれらの方策の検討がなされるべきであると考えるが、政府の今後の取り組み方針はどのようになっているのでしょうか。 違反発覚の経緯は他の事故が発端となった事例も多い。一流企業の長期にわたるデータ改ざんを許してきた構造的な問題が根底にあるのでは? バレなければよいと言う感覚が感じられるが?それを踏まえて、大臣のご所見をお伺いいたします。
さらに深刻なのは、ISO14001認証企業でも59.2パーセントが環境不祥事が起きる可能性があると環境管理担当者が回答。(ISO14001認証全国の3000事業所について日本適合性認定協会調べ)同じ調査で、ISO担当者の実に73.8%が自らの担当業務遂行について悩みがあると答え、環境基準遵守についての社内の意識の低さや、企業の本業との壁などが主なものとなっています。しかもその悩みをどこに相談して、解決するのかとの問いに、問題点を当該部署に指摘して、改善を勧告するという本来の解決策をとるとの回答は、わずか21%にとどまり、一番多い相談相手は、なんと他社の担当者で31%、次が他部門の担当者で24%、相談相手がいないが21%、社外の専門家が16.5%と続き、孤独な担当者の姿が浮き彫りになっています。先ほども申し上げたとおり、この種の違反事例は、決して、特定企業だけで見つかった悪質な行為ではなく、実は、どのような企業にも落とし穴が潜んでいるということです。企業現場は、ぎりぎりの合理化の中で、業務を余儀なくされる一方で、環境に関する規制や社会の目は厳しくなるばかりであり、性善説では対処できないんです。だからといってすべて「性悪説」で対処しろと言うわけではありません。むしろ「性弱説」に基づい
た対処が必要であると考えます。これら事例の根絶のために今回改正の罰則強化(罰金30万円)だけではたして対応仕切れるのかと危惧するものであります。
やはり、事業者任せではなく、外部監査など第3者のチェックが入るシステムこそが再発防止のためにも必要ではないかと考えるがいかがでしょうか?
次に
自治体側の監視体制の弱体化
今回の改正案では、継続して煤煙にかかる排出基準超過のおそれがある場合に、事業者による改善対策を地方自治体との連携の下で確実に図るため、地方自治体が改善命令等を広く発動できるよう見直しをするために、現行法では、排出基準に適合しない煤煙を継続して排出するおそれがあり、かつその継続的な排出により人の健康又は生活環境にかかる被害を生じると認めるときに限って改善命令や施設の一時停止を命じることができるとされており、従来は、2つの条件が整わなければ改善命令等を発動することができなかったところを今回の改正で、この2つの条件のうち、後者の健康や生活環境にかかる被害が生じることという条件を撤廃するとされております。これは確かに大きな前進であると評価するものであります。しかしながら、一方で自治体側の監視体制が近年大きく弱体化している深刻な現状があります。すなわち、
  大気分野担当職員数が減少している自治体が全体の44%にも登り、 水質分野でも39%の自治体で職員が減少 しています。 これと連動して、排出施設の立ち入り検査数も大きく後退しています。すなわち、
 煤煙施設 平成10年 28692件  平成20年 16312件
 排水施設について  特定事業場の立ち入り検査数
    平成10年 69475件  平成20年 43509件
自治体現場における、マンパワーの不足が深刻だと言わなければなりません。
そこでおたずねします。自治体における担当職員の監視能力の維持のためにこれまで行われてきた研修制度などをさらに強化する必要があると思いますが、その充実のために具体的にいかなる施策をお考えなのでしょうか。ご所見をお聞かせください。(続けて)
さらに自治体による効果的な監視の体制強化が急務の課題と考えます。このことは先の答申でも指摘されている。すなわち「測定・記録義務を実効あるものとするため地方自治体による立ち入り検査等の効果的な実施を促進する必要がある。」とされていますが、地方自治体の財政状況から、人員および予算の確保を行っていくことは現状では困難である。しかし、規制の実効性の確保のためには自治体の体制整備がなんとしても必要である。この点、来年度の予算には盛り込まれていないようでありますが、政府としてこの点いかなるお考えをお持ちでどのような対応を行っていくのか?大臣のご決意をお聞かせください。

最後の質問です。私はかねがね直罰規定がかえってデータ改ざんのインセンティブになっているのではないかと思っております。「継続的に排出基準の遵守がなされていたものの軽度の過失によって偶発的に排出基準の超過があった場合でも」現行法では、三月以下の禁錮または三〇万円以下の罰金に処されてしまうが、このことが現場でのデータ改ざんの誘因となってきたのではないかということであります。「事業者の速やかな届出があり、かつ地方自治体の指導の下で早期改善と原因究明・再発防止がはかられ、当該超過により人の健康または生活環境にかかる被害が生じるおそれが少ないと考えられるときには、排出基準違反に対する直罰規定の適用はない取り扱いとすることも検討する必要がある。」と指摘され、さらにこれに関して、「排出基準の適用に関しては、どのような場合が、排出基準超過に該当するのかが明確である必要がある。」とし、プラントの立ち上げ時や非意図的で急激な負荷変動等の否定常時における取り扱い、合理的な平均化時間の設定等を明らかにすることが必要であるとして、排出基準の適用の弾力化が提言されているが、この排出基準の適用の改善について今回の改正法案には直接盛り込まれていないようだが、政府の見解を求めたい。