鳩山首相所信表明演説を聴いて

26日午後2時から衆議院本会議が開会し、鳩山首相より所信表明がありました。総理の登壇に先立って閣僚の皆さんがひな壇に姿を現すと民主党席から思わず拍手がわき起こりました。菅直人副総理、岡田克也外務大臣をはじめ民主党の幹部を兼ねる面々がずらりと着席する光景」はさすがにインパクトが大きく、再び民主党席から割れんばかりの拍手が起こりました。その一方で改めて政権交代の現実を見せつけられた今や野党となった自民党席からは溜息の様などよめきを私は聞き逃しませんでした。さて、鳩山総理の所信表明はこれまでのような官僚の作文を棒読みする自民党首相のそれとは全く異なり、総理自身の思いを自らの言葉で語るという新しいスタイルで行われました。特に私が印象深かった言葉が2つありました。一つは「人間のための経済への転換」でした。「市場にすべてを任せ、強い者だけが生き残ればよいという発想や、国民の暮らしを犠牲にしても経済合理性を追求するという発想がもはや成り立たない。」具体的には、「経済面での自由競争は促しつつも、雇用や人材育成といった面でのセーフティネットを整備し、食品の安全や治安の確保、消費者の視点を重視する」ような経済への転換を図るというものでした。経済評論家の内橋克人さんの「人間復興の経済を目指して」という岩波新書を読みいたく感動したことがありましたが、今回の鳩山総理の言葉はこれと意を同じくするものでした。もう一つの言葉は、「無血の平成維新」でした。「官僚依存から国民への大政奉還であり、中央集権から、地域・現場主権へ、島国から開かれた海洋国家への国の形の変革の試みです。」との説明がありました。今回の所信表明について観念的であるとか具体性に欠けるなどという批判が自民党あたりから出ているようですが、自民党政権の継続をするならともかく国のあり方を変えるという大仕事を始めるには、まず理念を語らなければなりません。私は大変良かったと率直に思いました。

所信表明演説に臨む鳩山総理